【製品概要】
TONEFLAKE ファンタム電源『SUPREMO』
どんなに機材が進化してデジタル化が進み、DAWが席巻してアナログ機材を駆逐したかのように見えても、実際にはデジタルが進化すればするほどアナログの奥深さと、決して到達出来ない『ある部分』の真実に到達してしまうだけである。
デジタル化の恩恵は計り知れず、多くの才能を開花させる事に貢献した。しかし、音はそもそもこの物理空間に存在するエネルギー波の一種でありデジタル信号ではない。デジタルで処理するためにはこの物理現象を信号として捉え、コンピューターで処理出来る情報に変換しなければならない。バーチャル音源や、過去に作られた音の情報のコピーなどは最初からデジタルで存在するのでその限りではないが、人間の声、自然の音、楽器の音などはどうしても一番最初は超アナログな機材でその信号を電子化する以外方法がないのである。
その際、その音を捉える一般的な方法は『マイクロフォン』を使って録音する事だ。マイクロフォンには様々な方式があり、特に音楽録音現場に於いては現在その基本性能の高さと扱いやすさからDC48Vを中心とした電源を使用するコンデンサーマイクロフォンが広く使われている。
マイクロフォンの信号ラインにDCを搬送させ、デカップリングして音声信号だけを取り出す方法だ。これをファンタム電源と呼ぶ。マイクの回線にそのまま電源を搬送させるので、コンサートホールや大きなスタジオではその回線の長さの分そのまま電源も引き回されるようになる。数ミリアンペアの弱電流であるファンタム電源は長く引き回すにはちょっと脆弱で、マイクに到達する頃には結構質の悪い電源になっているケースが多い。電源インピーダンスも高くなり、アースからノイズも拾う事になる。
真空管式のマイクロフォンの電源の様にマイクのそばで電源供給すればまだ良いが、大抵はマイクのプリアンプや大型のレコーディングコンソールのマイクインプットから供給されるので、電源の品質はどうしてもその環境に左右されてしまう。また、この微弱電流についてそのクォリティを真剣に考察しているメーカーがほとんどないため、かなり荒っぽい回路になっている事が多い。DC48V流れていれば良いでしょうという感じで。
しかしである、肝心要の音の最初の入り口であるマイクを駆動させている電源であるので、その質はそのまま音のクォリティとなる。或る程度の価格帯の別体式ファンタム電源を試した事のある人ならわかると思うが、プリアンプやコンソールのファンタム電源と比べると『これが同じマイクの音か?』と思う程印象が変わる。距離感、S/N、歪み感、全てに於いてワンランク上の物になる。
その別体式ファンタム電源も、通常に売られているものはやはりコストパフォーマンス重視で、音質至上主義で開発されているものがほとんどない。企業は儲らないものは作らない。電源はその回路によって流れ方や質が大きく変わる事は設計する人間ならば常識として知っているが、一般ではほとんど知られていない。DC48Vなら全部同じでしょう?と。
【TONEFLAKEがファンタム電源を開発した2つの理由:その1】
TONEFLAKEはそんな現状に疑問を抱き、まずは実験でこれならばと思う回路を組んでファンタム電源を作ってみた。その結果は想像していたよりも分かりやすい変化だった。ちゃんとお金かけて回路を考え、使うべき部品を使い、組み立ても便利にするのではなく可能な限り音優先で作ればここまで変わるのかと。しかしこれを製品化して売ろうとするとどうしても2chで10万円前後になってしまう。ただ、この電源があれば今所有しているコンデンサーマイクの音が全てグレードアップするので考えようによっては安い。マイクを買い替える必要もなく、持っている資産の質が底上げされるわけだ。現状のマイクの音に満足出来ず、買い替えで乗り越えようとしても結局電源が悪ければその新しく買ったマイクにもいずれ不満が出る。その繰り返しなのだ。1chあたり約5万円であれば許容範囲とした。
【TONEFLAKEがファンタム電源を開発した2つの理由:その2】
かねてよりTONEFLAKEは1930~1960年代の真空管式の録音機材の研究に傾倒してきた。音楽が爆発的に広まり録音技術が発達していくその輝かしい時期に使われていたのは主に真空管式のプリアンプ、マイク、テープレコーダー、コンソールなどである。今でもそれらの機材は高値で取引され、丁寧に修復され使われている。しかしファンタム電源が未だ存在しない時代の物であるため、現在主流のファンタム式のコンデンサーマイクでそれらの機材を使おうとしても使えない。そこで別体式のファンタム電源を購入して使うのだが、ここでひとつ問題がある。これらのビンテージプリアンプと言われる機材の多くは当時の主流マイクロフォンである『リボンマイク」や『ダイナミックマイク』にそのゲインを合わせている物が多い。もちろんノイマンやテレフンケンなどは真空管式コンデンサーマイクを1930年代から使用しているのでゲインについては問題の無いものも多いが、とにかくリボンマイク用に開発されたプリアンプはゲインが高いため入力感度も高く、現在のコンデンサーマイクをそのまま繋ぐとボリュームやゲイントリムを絞っても歪んでしまう。そこでこれらを使う人はマイクとプリアンプの間にパッドを入れるのだが、このパッドがまたまたクセ者。音質を追求したパッドという物が録音機材市場ではほとんど存在しない。もちろん高級オーディオの世界ではいくらでも存在するし、常識にもなっている。だが残念な事に録音業界ではパッドはかなり軽視されていて、やはり『音が小さくなれば良いんでしょう?』くらいの認識しかないのが現状だ。ビンテージのプリアンプとファンタム式コンデンサーマイクの組み合わせではパッドが必須なのだが、満足いく音の物が市場に存在しないのでTONEFLAKEでは今回のファンタム電源開発で以前から作っていた高音質パッドもファンタム電源の回路に組み込む事にした。もちろん必要のない時は完全バイパス出来る。
これによりALTECやAMPEX、Telefunken、EMIなどの往年の名機でコンデンサーマイクを歪ませずに使う事が出来るようになった。内部の配線はWestern Electricの絹巻単線を使用、抵抗も数十種類からコストと音質のバランスの良いものを選び、組み上げ時に更に選別して使用している。ここまでやるととても音が良くなるのだが、量産するメーカーではこんな面倒な作業をしていたらとても採算が合わない。基本受注生産で手作業で作るからこそ、こだわる事が出来た部分である。
【最後に】
こういった経緯で開発されたので、現在の全てのコンデンサーマイクにバッチリとはまり、全てが良くなるとは言わない。相性もあるのでまずはデモ機で確かめる事を推奨する。その際に今までの環境の物とA/B比較が出来るようにすれば確実にその変化が分かる。デカップリングにトランスを使用しているので、繋ぐ機材のインピーダンスによってはゲインが3~5dB大きくなったりする事がある。パッドもその出力インピーダンスに依存するので、デフォルトでは約13~15dBくらい落とす設計になっているが、機材によってはこの数値も変化する。百聞は一聴にしかず、是非一度実機を聞いて欲しい。
【製品仕様および注意点】
※電源の電圧は100Vです。120Vで使用すると故障の原因となりますので、必ず使用電圧を確認してください。
※このファンタム電源は信号回線にトランスを使っています。その都合上この機械を使わずに直接プリアンプに繋いだ時と若干ゲインが変わります(インピーダンスにより前後します)。A/B比較などをする場合は完全にゲインを合わせた状態で比較をしてください。
※製品箱は製品保護用の簡易的なものとなっております。あらかじめ、ご了承ください。
※製品保証は購入より3ヶ月となります。
※注意事項等を守らずにお使いになられた場合の事故、損害に関しましては一切の責任を負いません。製品の取り扱いには十分ご注意ください。